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変形性膝関節症

変形性膝関節症とは

膝関節の関節表面をおおっている正常の軟骨(Fig1-1,2)は、骨同士が直接接しないよう緩衝材の働き(ショックアブソーバー)を担っています。しかし、加齢や関節を支える筋肉の低下などで軟骨が摩耗してしまう(Fig2)ことがあります。変形性膝関節症は、軟骨の変性・摩耗や低摩擦潤滑の障害で、反応性の骨硬化・変形・増殖により症状を引き起こす疾患です。軟骨が摩耗した場合、関節内で骨同士がぶつかってしまい、骨棘(こっきょく)というトゲが形成されたり、関節を包む関節包に炎症が発生し、関節液が過剰に分泌されて膝に溜まり腫れたりすることがあります。

Fig1-1

Fig1-1

正常の関節軟骨(豚の膝蓋骨から、関節軟骨とその直下の骨の一部を切り取った実際の標本です。):白い光沢のあるところが正常の柔らかい関節軟骨で2mm前後の厚みがあり、ゴムの様に、押すとへこみ、はなすと元に戻る弾力性があります。荷重に対して衝撃を吸収する役割をもっています。
正常の関節軟骨は、このように、表面が平滑で水分を十分に含んでみずみずしく、弾力性に富んでいます。
荷重(体重)がかかれば、押されて縮み、荷重がかからなくなると、元の形に戻ります。内部に含まれる水分が押し出されて縮み、元の形に戻る時には、出た水分もまた元へ戻ると考えられます。スポンジに含まれた水が、スポンジを押すと滲みだし、押すのを止めるとまた吸い込まれる、というイメージです。滲みだす水は関節の低摩擦潤滑に重要な役割をはたすと考えられます。この水分の出入りの調節に障害がおこることも、関節症の原因の1つと考えられます。

正常の関節軟骨

Fig1-2Fig1-2

正常の関節軟骨は表面が平滑で、赤く染まっているところが水分を十分に含んだ軟骨です。正常の関節では、平滑な軟骨表面どうしが向かい合って、関節液を潤滑液として、スムーズに滑って動いています。

傷のついた関節軟骨

Fig2

傷がついて表面がぎざぎざになった関節軟骨です。これでは、スムーズに滑ることはできず、歩くと非常に痛そうです。

変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症は、加齢に伴う膝関節の軟骨の変性が主な原因となります。このことから、高齢者に認められることが多いです。また、骨強度(骨密度・骨質)の低下も影響し、女性ホルモンの分泌量が大幅に低下する閉経後の女性に認められることも多く、比較的女性に起こりやすいです。
半月板損傷や靭帯損傷、骨折などの外傷後や、化膿性関節炎による軟骨障害などが原因となることもあります。その他、肥満や膝に負担がかかる動作なども原因となります。

変形性膝関節症の症状

変形性膝関節症は進行度に応じて「初期」「中期」「末期」に分類され、各段階で症状に違いがあります。

初期に起こる主な症状

  • 立ち上がる際に膝が痛む
  • 歩くとすぐに膝が痛くなる
  • 休憩すると痛みが治まる

中期に起こる主な症状

  • 歩行時に膝が痛くなる
  • 痛みにより階段の昇降ができなくなる
  • 正座ができなくなる

末期に起こる主な症状

  • 歩けなくなる
  • 膝をまっすぐに伸ばせなくなる
  • 膝の変形がはっきりと分かるようになる
  • 以前と同じような日常生活を送れなくなる

変形性膝関節症の検査・診断

椅子に座るまでの動作を観察し、歩行状態やどの程度の痛みなのかを確認します。その後、症状が起こったきっかけや痛みの程度を詳しくお伺いし、触診にて痛みの程度や関節の可動域、関節の安定感、腫れや変形の有無などを確認します。レントゲン検査で関節の状態を調べますが、レントゲン検査では軟骨の状態については正確な診断を行えないため、必要に応じてMRI検査を行うこともあります。
膝関節内の関節液貯留が強い(腫れが強い)場合、針を患部に指して貯留している関節液を採取し、その性状を調べる「関節窄刺」を実施することもあります。本来、関節液は黄色がかった透明な色ですが、採取した液が白色に濁っている場合は化膿している疑いもあるため、関節液検査・血液検査で詳しく調べます。

関節鏡でのぞいた膝関節内

正常な膝関節内

表面平滑で弾力性があります。走ってもジャンプしても痛くありません。

中程度に傷んだ膝関節内

表面が毛羽立ち、傷がついています。階段の上り下りや歩行時に痛そうです。関節液が溜まって関節が腫れそうです。

高度に傷んだ膝関節内

表面の軟骨がほとんどはがれ、硬い骨が露出しています。歩行時の疼痛が強く、長い距離を継続して歩くのは辛そうです。

変形性膝関節症の治療

生活指導や運動療法、物理療法、装具療法、薬物療法などの保存的療法を主に実施します。保存的療法では効果が不十分な場合は手術が検討されます。

生活指導

膝に負荷がかからない歩き方や靴の選び方を指導します。また、肥満の方にはダイエットの指導も行っています。

リハビリテーション

リハビリ室痛みで運動を控えるようになり、膝を支える筋肉が弱まるという負のループに陥ることがあります。運動療法では、膝に負荷をかけずに筋肉を鍛えられる水中歩行やエアロバイクなどの運動を指導します。また、ご自宅でも行える運動もあります。
電気や超音波、熱などの物理的エネルギーを利用し、痛みを緩和する治療を併用することもあります。

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装具療法

患者様の状態に応じて、サポーターや足底板などを作成します。また、患者様の身長に合った杖を使用し、膝に負担をかけないようにすることも効果的です。

薬物療法

炎症鎮痛薬(内服薬・外用薬)などにより痛みを緩和させます。また、ヒアルロン酸を患部に注射する治療も効果的です。

こうした保存的療法で効果が不十分な場合、手術を行うこともあります。手術が必要と判断される場合、連携先の高度医療機関をご案内し、すぐに治療を受けられるようにサポートします。